留学のため、海外にいる配偶者のもとへ行くため、仕事の関係で、などなど、きっとこのページをご覧の方は、カナダへ渡航するために必要な書類を整えていらっしゃるころだと思います。
きっと今、手続きの中で最もややこしいものの一つである、戸籍謄本をはじめとした各種の書類を英語に翻訳し、それらを公証してもらうことに手を焼いていらっしゃるのではないかと思います。
(Photo: Niagara Falls, Les Chutes du Niagara)
じつは、翻訳をご依頼いただくお客様から、公証までの手続きについて
「よく分からないんです」
とご連絡いただくことが多く、私どもも一緒になってお調べして、公証まで持っていくということがあります。
実際のところ、結構ややこしいのです。たいていの場合、行き着くのは、「どこへ聞いてもよく分からない」です。
何かお客様に、公証までの手続きを円滑にするご案内ができればと思っていたところ、私どもの日本在住の翻訳担当者さんがカナダへ行くことになりましたので、その翻訳担当者さんの動きを実例としてご紹介し、あなたの各種書類の英語版の準備から公証の完了までのご助力になればと思っています。
戸籍謄本 英語に翻訳から公証まで カナダ編
それではどうぞ。
【どのような書類を準備する必要があったか】
- 戸籍謄本
- 改製原戸籍(結婚の証明が書かれたもの)
- 上記2種類の書類の英訳
- 無犯罪証明書(管轄の警察本部で入手)
【カナダ大使館への問い合わせ・やりとり】
私の場合は主人が先にカナダに入国しており、一人でカナダのパスポートを持っている子供二人を入国させる必要があったため、以下のような質問から始まりました。
<質問>
主人が既に入国しており、後で片親が子供2名を連れて入国する場合、主人に同意書を書いてもらう必要はありますか?
<カナダ大使館の回答>
まず、カナダ国籍をお持ちの方は、カナダパスポートで渡航する必要があります。
未成年の渡航に必要な書類は以下の通りです。
- カナダパスポート
- カナダ国内の身元引受人からの手紙
- 渡航に同行しない親(父親)からの同意書(戸籍謄本+英訳)
同意書と戸籍謄本の翻訳を、最寄りの公証役場で公証をしたものを渡航時に携帯してください。
これらの書類は、お子さんの渡航時に携帯をしていただきますが、大使館や領事館にご提出を頂くものではありません。
※筆者フォロー)ちなみにバンクーバーの空港は過去6か月の間に様変わりしており、完全にシステムで管理されていました。まだ入国審査官はいますし、話をする必要もありますが、全く混雑がなく、システムで顔写真等もとるため、書類の提示は全く求められませんでした。子供がカナダ国籍を持っている場合は、カナダパスポートなしではカナダへの渡航はできないことについ最近なったみたいです。
<質問>
ETAは昨年の12月に入手しておりますが、一度の申請で半永久的に再申請の必要はないという理解で大丈夫でしょうか?
<カナダ大使館の回答>
こちらのサイト内Check your eTA statusで、保有状況を確認出来ます。ご活用ください。
※筆者フォロー)カナダへの渡航にはパスポートのほかに必ずETAというEビザが必要となります。実際の有効期限は5年間です。(2017年11月16日現在)
<質問>
パスポートと連動していると理解しているので特に紙ベースでETAの用意はしておりませんが、宜しいですか?
<カナダ大使館の回答>
eTAはパスポート番号に自動リンクしていますので、コピーは特に必要ありません。
<質問>
戸籍謄本の訳はCertified Translatorにお願いしますが、それで大丈夫でしょうか?
<カナダ大使館の回答>
仕上がった翻訳と原本をお近くの公証役場において公証印を受けたものをご提出ください。
<質問>
配偶者ビザの申請に必要なものとしてカナダ政府のウェブサイトに必要書類が書かれていますが、national identification cardsとは何が該当しますか?
<カナダ大使館の回答>
マイナンバーや国民健康保険証です。コピーを取られる際には英語翻訳をつけてください。
翻訳は全て公証していただく必要があります。翻訳者が行く必要があるか否かは、公証役場にお尋ねください。
こちらはプロセスを行っておりませんので提出書類に関しては、IRCCのサイトをお読みになって、ご自身でご判断をお願いします。
【K公証役場への問い合わせ・やりとり】
カナダ大使館から上記のようない指示があったので、最寄りの公証役場に行ってみる。
担当してくれたおじさんは見かけの田舎のおっとりした感じとは裏腹にかなりの知識人だった。彼の口からでる言葉は見かけのギャップに圧倒されるぐらい真実味があり、その優しい口ぶりと正反対の正確すぎるぐらいの情報量が、あの昭和初期のような古ぼけたオフィスの中ではありがたかった。
【最終的にどういう形で公証が完了したか】
おじさんによるとカナダは先進国では珍しくハーグ条約を結んでいないということで、古めかしいファイルをめくりながらカナダはやはり条約国に入っていないとご自身も驚きながら説明してくれました。
あまりにファイルに年季がいっていたため「すみません、その中身の情報は最新のものでしょうか?」とおじさんの気持ちを損ねないようにお伺いすると、「こちらは毎年一月に必ず更新するため、間違いはないんですよ。」とこちらの不安を払拭するように丁寧に答えてくれました。
ハーグ条約参加加盟国:
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000610.html
この条約に参加していない国はアポスティーユが必要ないそうです。アポスティーユについては以下のサイトをご確認ください。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000548.html
ざっくり言うと、外務省の証明で、東京、大阪、名古屋の三か所の公証役場でしかもらえないものだそうです。これはこの3か所は規模が大きいためこのアポスティーユの手続きまでできると聞きました。ただこのおじさんによると、アポスティーユはハーグ条約を結んでない国には提出してもかえって不必要なスタンプが押してあることがあだになるため、カナダの場合はアポスティーユをつけない形にしなければならないと言うことでした。
最終的にはアポスティーユをつけていないものを公証役場側で準備してくれて、それに公証の前で署名をするという作業をしました。
【所感】
今回の一連の作業で思ったことは、大使館側は最後には自分で調べて下さい、というそっけない感じです。資料の種類などは公証役場側で確認してくださいとも言われました。
公証役場では、「こちらは基本的に公証人がお客様が署名するのを公証するのみなので、国ごとの決まりはわからないので、大使館側に確認してその指示に従ってください。」と言われました。これはもっともな意見だと思います。
担当してくれた方が知識をお持ちでしたので、アポスティーユのことなどもよくご存じで助かりました。実際はそこまで親身になってお話をしてくれる方はそれほどいらっしゃらない場所が公証役場なのではないかと思います。
いかがでしょうか。
この実例から分かることは、
- カナダ大使館からは、有用な情報は得られないかも。
- 公証役場はカナダ大使館と連携しているわけではない。
- カナダ大使館が言うことと、公証役場が言うことは一致していない。
- 公証役場は公証をする組織であるため、あまり海外渡航の手続きについての知識がない。
- これらを踏まえ、結局何が必要なのか、聞いてもよく分からなかった。そのため、公証が円滑に得られるように、翻訳証明があるもの・ないもの、宣誓書があるもの・ないものなど、複数の書類を準備して公証役場に出向き、使えるものを使うこと。
実際のところ、大使館はビザの手続きなどの実務を行なっているわけではありませんので、聞いたところで答えていただくのは難しいと思います。また、公証役場は公証をすることが仕事の組織ですので、あなたが海外に行くために必要なことをご存知ではないんですね。
これらを踏まえ、私どもから、「カナダへ行くための書類はこのようにすべきである」と断定してお伝えすることができないのですが、少なくとも、
- 戸籍謄本や戸籍抄本の英語版は必要である。
- 翻訳証明があるものとないもの、両方を準備しておいたほうが便利である。
- 宣誓書(私がこれらの書類を英語にしたという声明。もちろん英語)を準備しておいたほうが便利である。
この3つは間違いのないところです。
どうぞご参考になさってください。
なお、全国の公証役場の一覧は日本公証連合会のウェブサイトで確認できます。
公証役場一覧
http://www.koshonin.gr.jp/list
お近くの公証役場に出向いていただき、公証の手続きをすればよいのですが、アポスティーユ(公文書に対する外務省の証明)を取得できる公証役場とそうでない公証役場があります。
タイナーズが直接、公証役場にその理由を問い合わせたところ、「要望の多いところでは取り扱っており、そうでないところでは取り扱っていない。田舎のほうですとあまりアポスティーユの要望が少ないんです」とのことでした。
もしアポスティーユを必要としている場合は、事前にアポスティーユに対応しているかどうか、電話で問い合わせをしたほうがいいと思います。
戸籍謄本をはじめ、抄本や改製原戸籍、除籍謄本などの翻訳(英語)をご希望でしたら、お気兼ねなくご連絡ください。
タイナーズの戸籍謄本 翻訳サービス
http://www.tiners-p.com/family-register.html