幼いころから、本を読むのが大好きでした。しかし、田舎で生まれ育ったため、徒歩や自転車で移動できる範囲には、いわゆる本屋さんはありませんでした。今なら、アマゾンを使って、よりどりみどりでしょうが、そのために却って、本を大切にし、また、気に入った本や好きな部分を何度も読み返すようなくせがついたように思います。
フィクション、ノンフィクションを問わず、さまざまなジャンルを読みますが、一度読んで気に入ると、そのシリーズ、その著者の作品をどんどん読んでいくような感じです。
たとえば、ロバート・B・パーカーのスペンサーシリーズは、友人から、「これは面白いよ!」と奨められて読み始めたのですが、ハードボイルド系で、なかなか楽しめました。そのため、スペンサーシリーズはすべて読破することになりました。読破といえるのは、数年前、パーカー氏がなくなってしまい、もう新作が登場しなくなってしまったためです。読者としては、本当に寂しい限りですが、作品の主人公である、私立探偵のスペンサーも、確か70歳ぐらいになってるはずなので、それはそれでよかったのかもしれません。
その後、誰かの書評で、「日本のスペンサーのようだ」というフレーズが気になって、堂場瞬一さんの鳴沢了シリーズを読み始めました。私立探偵と刑事なので、若干状況は違いますが、主人公のおしゃれに強烈なこだわりがあるところなど、似たところが多く、とても楽しく読めました。これも、シリーズが完結してしまったのでとても残念ですが、いわゆる大団円的な終わり方だったので、読者としては満足しています。
他にも、歴史小説が好きで、各国の歴史小説を読みますが、先日読んだ中に、大航海時代の先駆者となったポルトガルのエンリケ航海王子の話がありました。彼は長子ではなかったので、王位を継承することはなかったのですが、非常に優れた王子だったようです。そして、彼の父はジョアン1世で、母はイギリスから嫁いだフィリパでした。
読書といっても、活字はもちろん、漫画も昔からよく読んでいました。その中に中世スペインを描いた、青池保子さんの「アル・カサル」という作品があります。有名なイザベラ女王の前の王朝の王である、ドン・ペドロを題材にした作品ですが、そこに、フィリパが登場します。
イザベラ女王の祖父はドン・ペドロの異母兄であり、弟である王から王位を簒奪します。その後、ドン・ペドロの娘がイギリスに亡命し、イギリスの王子と結婚するのです。その前妻の子供がフィリパなのです。
それぞれの作品には、まったく接点はないのですが、私の中で、エンリケ航海王子とドン・ペドロが繋がったときには、思わず、「ああ、そうか!」と声を出して叫んでしまいました。
歴史も年表を眺めて、一生懸命に語呂合わせで出来事を覚えても、無味乾燥なだけですが、そこには、今の私たちと同じように、人が生きていたのだということを考え、どんな人生を生きたかを考えると、途端に魅力的に思えてきます。
その肉づけをするのに最適なのは、私にとっては、読書なのです。面白いもので、ふだんなら思い出しもしないことが、あるきっかけで次々と蘇って来たりします。点と点が線になる瞬間の醍醐味を味わうことができるのも、読書の与えてくれる、もう一つの楽しみなのです。