会社の登記簿(履歴事項全部証明書)に、新株予約権の項目があります。
といっても、ほとんどの法人ではこの項目はなく、上場企業あるいは大規模な法人、そしていわゆる中小企業の一部が、この新株予約権を用いているのではないかと思います。
(膨大な法人数の登記簿を、調べようもありませんが)
きっと今、このページをご覧の方は、大企業、とりわけ持ち株会社(ホールディングス)のIRの部署にご所属の方が多いのではと思っています。
さて、この新株予約権。正しい英訳は、
Share options
です。
これが正解で、これ以外の表現は不正解です。
と言いたいところですが、けっこう新株予約権の英語表現は複数あり、判断が分かれるところですので、参考までに、よく見かけるものを3つほど、列挙していきたいと思います。
stock option (正しい。でも、)
stock(株式)のoption(権利)という意味であるため、字面だけを見ると合っています。また、アメリカ英語では、shareの変わりにstockを用いる、ということが言われており、その点からもこの表現は正しいです。(しかし、弊社のアメリカ人翻訳担当者は、そうだっけ?share optionのほうが良いと思うけど、と言っていましたが。)
いっぽうで、ちょっとややこしい話ですが、日本の法律でうたっているストックオプションは、新株予約権を構成するものの一つであるため、英語表現でstock optionを用いると、ちょっと混同するのではないかなあという懸念もあります。
Equity warrant(たぶん正しい)
合っていると思います。「思います」と言ったのは、意味を見ると、Equity(株式)のwarrant(ワラント、債)ですので合っているように見え、また、辞書などでもEquity warrantを新株予約件としているものが多いからです。ですが、実際のところ、弊社の長い翻訳経験の中でも、文書や海外取引先とのお話しの中で、Equity warrantが使われたことがないのです。ですから、経験則的に、あまり用いないほうがいいのかなと考えています。
Stock acquisition right(正しい。分かりやすいかも)
合っているように見えます。そのまま日本語にすると、Stock(株式)の acquisition(取得の) right(権利)。なんとなく日本語の直訳英語のように見えますが、ドンピシャで合っているように見えます。実際のところ、日本を代表するような企業(車の会社やポータブルの音楽再生機器で一世を風靡した会社や、球団を持っているインターネット系の会社)でもよく使われています。
ちなみに、かのGoogle先生(Google翻訳のことです)でも、新株予約件を検索するとこの英語表現が出てきます。
分かりやすいと言う意味では、使い勝手が良いように思います。
と、このように、案外、Share options以外にも、結構使えるものがあります。
総じて、新株予約権のような法律に基づいた用語というのは、厳密に言うと、その国ごとにどのようなものであるかを細かに精査することで初めて正確な英語表現にたどり着くのかなと思います。
これは、翻訳業務を行なう私どもの領域の話ですが、ある言語を他の言語に翻訳するときは、言葉合わせのパズルゲームではなく、その言葉が用いられる背景のところまで理解するように努めるのが必要だと考えます。
まあしかし、登記簿(履歴事項全部証明書)の新株予約権の英語表現では、Share optionsを使えば間違いないと考えて差し支えありません。
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